リーチングホーム日本ステージ
尼崎〜神戸


2003年9月21日(日)
河野兵市さんといえば、単独歩行で北極点に到達した世界で初めての人である。
知る人ぞ知るその河野さんは、2001年「リーチングホーム」という企画を立て、北極点をスタートした。
「リーチングホーム」は鮭が生まれた川を目指して帰るように、生まれ故郷の愛媛県まで歩いて帰りたいという河野さんの思いが込められている。

2001年3月26日、河野さんは単身北極点を出発したが、5月17日志半ばにして帰らぬ人となってしまった。
リーチングホーム」は5年計画で4ステージに分けられ、日本ステージは第4ステージのサハリン〜愛媛に組み込まれていた。
リーチングホームは壮大なアドベンチャーであり、これをトレースできるのは河野さん以外に故植村直己さんしかいないであろうと言われていた。
それは、河野さんの遺志を継ぎ、リーチングホームを代行できる人は皆無であることを意味している。

しかし、リーチングホームは4ステージに分けられていた。
河野さんの遺体が発見された直後、奥さんの順子さんと二人のお子さん(美樹ちゃん、遼兵くん)は
「お父さんが歩くはずだった日本のルートを歩こう」
話し合ってそう決めたそうだ。


河野遼兵くんと河野順子さん。
残念ながら美樹ちゃんは学校の文化祭準備のため今日は不参加。

そして、河野さんの友人、小宮雄一郎さんがその気持ちにこたえた。
「故郷へ帰るという行動には国境越えが必要だ。サハリンからスタートしよう。
2003年7月5日、小宮さんはサハリン北端のオハを単身出発(オハ〜愛媛:約3000km)。
ユジノサハリンスクで河野さん家族と合流、フェリーで国境を越えた。

以下、順子さんが勤める会社の社内報(9/21に順子さんからいただいた)に掲載された手記から引用。
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「家族で、旅の続きを完結させたい」をこの夏ロシア、サハリンから開始した。
そのメンバーは、世界を5万キロ歩いた実績を持つ、友人小宮雄一郎さんと私、娘十四歳と息子十歳の四人である。
贅沢はしなくていい。
親の生きた姿を体験し、自分の足で歩くこと。ただそれだけで、きっといつか、かけがえのないものが、見えてくる。
歩くとそれが判る。
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稚内からは田中すすむさんも加わり、仕事や学校のある河野さん家族に代わり二人で日本ステージを歩かれた。
河野さん家族は週末や時間のあるときに小宮さん、田中さんと合流した。

そして、今週末は大阪〜神戸を歩き、幸運なことにボクもご一緒させてもらうことができた。
奥さんの順子さんは飾らない気さくな人で、初対面のボクにも楽しくいろいろな話を聞かせてくれた。
仕事を持つ会社員であり、二人の子供の母であり、そして、河野さんの妻である。
働いて生活費を稼ぎ、子供達の勉強を見たり食事を作ったり面倒を見、そして、河野さんの遺志を継いで週末は日本を歩く。
とても忙しい人だ。
でも、とても楽しそうだった。


自転車で駆けつけたJACCの竹沢さん(右)

河野さん家族が歩く姿を見ていて、順子さんがやろうとしてる本当のことは、世間に河野さんの遺志を継ぐということを知らしめることではないと思えた。
二人のお子さんに
「おとうさんは、こんなことをやろうとしていた人だったんだよ」
と教えたいのだろうと思った。
美樹ちゃんは中学生、遼兵くんは小学4年生。
家を空けることが多かったという河野さんと接する機会がきっと少なかったのだろう。
「お父さんのことをもっと教えてあげたい」という順子さんの思いが伝わってきた。

尼崎〜本山(神戸市)までたった20km弱だったが、一緒に歩かせてもらい、貴重な体験ができてよかった。
ボクも河野さんの遺志を一部トレースできたと思う。

9/21(日)に一緒に歩いたメンバー。
河野順子さん、河野遼兵君、小宮雄一郎さん、田中すすむさん、十場さん夫妻とそのお子さん、テレビ局(愛媛の放送局)の人、松村。
JACCの竹沢さん、瀬川さんは自転車で駆けつけた。
河野さんの友達の女性も途中から合流した。
昼食を一緒にとったあと西宮駅近辺でわかれた。
久保幸司さんは昨年末に自転車世界一周から帰国されたばかりで携帯をもっていなかったのでなかなか合流できず、本山駅のちょっと手前でやっと合流できた。


後列:田中、瀬川、竹沢、松村、小宮、十場(夫)、十場(妻)
前列:河野遼兵、河野順子、十場(息子)、河野さんの友人(敬称略)

小宮雄一郎さんはリヤカーを引いて世界中を歩き回った冒険家。
旅の途中で河野兵市さんと出会っている。
十場さんはアラスカを旅しているときに小宮さんと出会っており、直接河野さんとは面識がないようだった。
奥さんは河野さんがどういう人かもよくわからないようだったが、楽しい人だった。
末っ子(5番目)の息子さんは中学生で、体操部にはいっていて今年は近畿大会まで行けたとうれしそうだった。
はきはきしていい子だった。
田中すすむさんは、自転車で5万キロ、徒歩で1万キロ世界を旅した冒険家。
モノの豊かな日本はつまらない、つまらない人間がつまらないモノばかり作っている。
と嘆いていた。
世界を見てきた肥えた目は厳しく我々を見ているようだった。

リーチングホーム日本ステージのゴール(愛媛県瀬戸町)は10月13日(月)体育の日。
当日の朝、ズームインスーパーでその様子が放送される予定。